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ノーベル賞を取った投資理論

現代のファイナンス理論

株というのは研究さえすればある一定の水準で、その値動きを捉える事が出来るものだと考える人は大勢います。今日上がると明日は下がる、大きく値下がりした翌日は値上がりする、2日連続で下げると次は上がる等々、株の歴史上、多くの人が株必勝法の研究に膨大な時間と労力を費やしてきたのです。

1952年、シカゴ大学の大学生ハリー・マーコウィッツは、博士論文のテーマに株式を選びました。彼は株価というのはルーレットやサイコロのように、上がったり下がったりランダムに決まるもので、全ては確率で決定されるのではないかと考えた、これを「効率的市場仮説」と言う。そこで確率計算や統計学を使う事を思い付く。

1827年、ロバート・ブラウンは水に浮かんだ花粉が奇妙な動きをしているのに気付いた。この動きの謎は1905年にアインシュタインによって、熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされる現象である事が確認されました。このでたらめな動きをブラウン運動と呼び、マーコウィッツは株価の動きもこのブラウン運動と似たようなものではないかと考えたのです。

リスクというのは損する可能性を表す言葉ではなく、予測可能性を表す言葉です。リスクが低いというのは予測可能性が高く、リスクが高いというのは予測可能性が低い事を表します。つまり、リスクと期待リターンは1対1で対応しており、リスクが低いというのは儲かる可能性も低く、リスクが高ければ儲かる可能性も高いという事です。リスクは儲かったり損したりする可能性を言うのですから。

マーコウィッツは個々の株にはそれぞれリスクが存在しており、正反対のリスク特性を持つ銘柄同士を保有する事で、打ち消し合う波のようにリスクは軽減させながら、期待リターンは高く維持出来るのではないか? と考えました。そして彼は株式投資の世界で昔から有効とされてきた「分散投資」の効用を数学的に証明したのです。これがモダンポートフォリオ理論です。

マーコウィッツの発見は、リスクが低い銘柄(電力株など)とリスクが高い銘柄(IT銘柄など)を組み合わせる事で、たった一つの銘柄に全額投資するよりも低いリスクで高いリターンを得られる、というものでした。とはいえ、組み合わせパターンは沢山あるし、その人の経済状況によっても取れるリスクには違いがあります。

プロの証券マンは、そういった点を挙げてだから自分達にお金を払って、自分にピッタリのポートフォリオを作りませんか? と言ってきます。確かに素人の自分が考えるよりも、経済状況からプロにオーダーメイドのポートフォリオを作ってもらう方が無難でしょう。それが伝統的な証券マンの仕事内容だったのです。

しかし、イェール大学で教鞭を執っていたジェームズ・トービンは、どんな人だろうと株式銘柄の保有比率は同じでよいと言い出しました。トービンは大事なのは銘柄ではなく、各々のリスク許容度に合わせて株式と国債(無リスク資産)の割合を決める事だと主張したのです。これを効率的ポートフォリオと呼びます。

そしてウィリアム・F・シャープが「資本資産価格モデル:CAPM(キャップエム)」という理論を提唱します。シャープは値動きの要素は

1.銘柄固有の動きα
2.株式市場の銘柄が感応する動きβ
3.予測不可能な出来事

の3つであり、分散投資は3を消し去る効果がある。ならば値動きは1と2で決まるが1のαは一定であり、リターンは最終的にβで決定される事になると主張したのです。さらにここから効率的ポートフォリオは世界に一つしかなく、それは世界の株式市場の縮小コピーであると結論付けたのです。

上記の3人は、それぞれノーベル経済学賞を受賞しました。

効率的市場仮説は正しいのか

多くの学者達によって最終的に導き出された最も正しい投資方法は、

「インデックスファンドを買えばいいだけ」

というものだったのです。しかし、これはプロの証券マンからしたら一大事です。彼らの仕事は顧客に合わせてオーダーメイドのポートフォリオを作りお金を貰う事ですから、効率的市場仮説が正しいとすれば株のプロなど必要ないという事になるからです。そこで株のプロ達は、理論の前提となる効率的市場仮説を集中砲火するようになりました。

効率的市場仮説とは、市場は効率的であり、株価は将来に対する情報は既に織り込まれた状態になっているという仮説です。つまり、割安株があったとしてもめざとい投資家達がすぐに見つけ出し食い潰してしまうため、株価に影響を与える情報は瞬時に株価に取り込まれ、どんなテクニックを用いても恒常的に利益を上げ続ける事は不可能というわけです。

インデックス投資家のバイブルとも言うべき「ウォール街のランダム・ウォーカー」の中で、著者バートン・マルキールはこれを端的に表すジョークを紹介しています。

効率的市場理論を信奉するファイナンスの教授と学生が交わす有名なジョークから始めよう。お札を見つけた学生が立ち止まって拾おうとすると、教授はそれをたしなめて、「よしたまえ。もしそれが本物のお札なら、今まで放置されているはずがないだろう」と言った。(第10版p334)

ウォーレン・バフェット、ピーター・リンチのように大儲けした投資家もいるじゃないかとか、投機家として勝ち続けたラリー・ウィリアムズはどう説明するんだとか、色々な反論がありますが、結局のところ株をやる人は儲けようと思って買うわけですから、最終的なパフォーマンスを比較すればどちらの陣営が正しいかはすぐに分かります。

市場そのものに投資しているインデックスファンドと、ファンドマネージャーが分析、調査をして売買銘柄を決定し運用しているアクティブファンド、どちらが儲かっているのでしょうか。投資の本場アメリカでは、何度となく金融のプロ達が運用するアクティブファンドと市場平均(インデックスファンド)のパフォーマンスが比較されてきましたが、一貫してアクティブファンドはインデックスファンドに勝てないという結果が出ています。

中には市場平均を超えるパフォーマンスを出すファンドも現れますがそれは少数であり、しかもそういったファンドも毎年恒常的に市場平均を上回る事は出来ないのです。インデックスファンドと比べてアクティブファンドは手数料などのコストが高くつきます。市場が効率的であれば誰も未来を予測出来ませんから、高コストの分だけどうしても不利になるのです。

中には毎年市場平均を超えるアクティブファンドは無いかも知れないが、超えるファンドが存在する事は確かである。そういったファンドを選べば市場平均よりも儲ける事は可能だ、と主張しますが、どのファンドが儲かるかなど事前にどうやって知るのでしょうか。そんな未来予測が出来る人間なら値上がりする株も分かるでしょうし、わざわざ高い手数料を払ってファンドを買わずに直接株式を購入するでしょう。

日本では通用しないインデックス投資

ノーベル賞を取り、パフォーマンスでも勝っているインデックス投資ですが、実は日本では上手くいっていません。日本市場を対称としたインデックスファンド(TOPIX等)を購入しても、過去20年間マイナスにしかならなかったからです。

1929年、アメリカでブラックサーズデーと呼ばれる株価大暴落が起きました。多くの人が破産し、世界経済に壊滅的な打撃を与えたとされる出来事ですが、暴落直前の高値で株を買ったとしても、持ち続けていれば損失は1950年代には消え、そこから値上がりした計算になります。しかし、日本で同じようにバブル崩壊後、株を保有し続けていたら大損していたのです。

なぜ日本市場ではインデックス投資が上手くいかないのかは、はっきりした答えは出ていません。言える事は日本でインデックス投資は通用しないという事なのです。

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