生活保護とは?

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日本の生活保護の歴史

日本の公的扶助制度は、西暦701年の大宝律令にその輪郭をみることができます。それ以後も徳川時代前記の御救金、御救米など窮民救済制度がありました。

現在の近代的な公的扶助が現れるのは明治以降です。明治7年の「恤救規則(じゅっきゅうきそく)」を経て、昭和4年に「救護法」されたことで、法制的に整備された公的扶助制度が確立しました。

当時の救護は国家責任の明確な規定を欠いており、失業による困窮は救護対象としないなど差別的、制限的であったため、当時の要保護者救済に十分対応できませんでした。その後、不備をカバーするため母子保護法、軍事扶助法、医療保護法などが制定され終戦を迎えます。

昭和20年8月、大量の戦災者、引揚者、失業者が発生、臨時措置として昭和20年12月15日に「生活困窮者緊急生活援護要綱」が決定し、昭和21年4月より実施されます。しかし、臨時措置であったため、同年9月、旧生活保護法が制定、同年10月から施行されます。これに伴い救護法、母子保護法、軍事扶助法、医療保護法などは廃止されます。旧生活保護法において、はじめて要保護者に対する生活保護が国家責任を原則とすることが明文化されました。

生活保護受給者は平成7年から増加に転じ、平成27年3月では約217万人と急増しています。その後、生活保護費の不正受給が社会問題となり、平成25年12月に生活保護法は改正されました。

生活保護制度の目的

現在の憲法が制定されるまで、日本には国民の生存権の保障という考えはありませんでした。しかし、日本国憲法には「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を有する」と規定されており、国民に健康で文化的な最低限度の生活を保証することは、国の義務とされました。

この憲法による生存権の保障を制度化したものが生活保護法です。さらに、単に生活に困窮している国民に対して、最低限度の生活を保障するだけではなく、積極的に困窮者の自立の助長も目的としています。生活保護は最低限度の生活の保障と自立の助長、この二つが制度の大原則であり車の両輪です。

生活保護制度の基本原理

生活保護法には、制度運用にあたり国民が等しく理解し順守すなければならない原理が明記されています。

1・国家責任による最低生活保障の原理(法第1条)
2・保護請求権無差別平等の原理(法第2条)
3・健康で文化的な最低生活保障の原理(法第3条)
4・保護の補足性の原理(法第4条)

1、2、3は国が守るべき事柄を定めたもの。4は保護を受ける側が守るものです。

国家責任による最低生活保障の原理

生活保護法の基本的原理であり、生活に困窮する国民の保護を国がその直接の責任において実施すべきことを規定したものです。また、生活の保障のみならず、積極的に被保護者の自立の助長を図ることを目的としていることも規定しています。

「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」(第1条)

保護請求権無差別平等の原理

旧生活保護法では素行著しく不良な者、勤労を怠る者については救護、保護を行わないと定めていました。しかし、現在の生活保護法では「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を無差別平等に受けることができる(法第2条)」と規定しており、性別、社会的身分、困窮の原因など一切問わず、現在の経済状態だけに着目して保護を行います。

健康で文化的な最低生活保障の原理

この原理は制度で保障する最低生活の水準を規定しています。つまり、保護の水準の確保が目的の原理。

「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(法第3条)」

保護の補足性の原理

補足性の原理は、国民の側において保護を受けるために守るべき最小限の要件を規定した原理。保護を受けるためには、各自がその持てる能力に応じて最善の努力をすることが求められ、そうした努力をしても尚、最低限度の生活が営めない場合に保護が実施されます。これは保護費が国民の収めた税金という性格からして当然です。

このため、生活保護を申請すると、要件を満たしているかチェックするミーンズテスト(資力調査)が実施されます。

生活保護実施上の原則

生活保護法には実施に関する原則が定められています。「申請保護の原則(法第7条)」「基準及び程度の原則(法第8条)」「必要即応の原則(法第9条)」「世帯単位の原則(法第10条)」の4つです。

申請保護の原則

申請保護の原則とは、申請行為を前提としてその権利の実現を図るというもの。一方、保護の実施機関としては、要保護者の発見、町村長などによる通報があった場合には適切な処置をとる必要があります。

そこで、こうした必要性から、法は申請保護を原則としながらも、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくとも必要な保護を行うこと(職権保護)ができる旨を明記しています。

基準及び程度の原則

法第8条により、保護の実施は、「厚生労働大臣の定める基準により測定した、要保護者の需要を基とし、そのうちその者の金銭又は物品で満たすことのできない、不足分を補う程度において行うもの」と規定しています。

現行の保護基準は、最低生活に必要な費用を各種の扶助ごとに金額で示していますが、この基準は保護が必要かの判定の機能も有しています。保護基準は、保護の支給基準であると同時に保護の要否の判断基準ともなっているのです。

必要即応の原則

保護が要保護者の年齢別、健康状態といった個々の事情を考慮した上で有効かつ適切に行われるべきことを規定している。

これは生活保護制度の機械的運用を戒め、個々の用語保護者の実情に即し、有効適切な保護を行うという趣旨で設けられた規定です。

世帯単位の原則

保護の要否や程度を世帯単位で判定、実施するという原則。これは保険などにおける給付の単位と異なる点です。個々の困窮者には保護の請求権がありますが、その者が生活困窮に陥っているかどうか、どの程度の保護を要するかの判断は、その者の属している世帯全体について行うという趣旨です。

生活困窮は個人単位ではなく、生計を同一にしている世帯全体を観察してはじめて把握される現象であるという社会通念に基づいています。

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